石井遊佳「百年泥」を読みました

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    遅ればせながら第158回芥川賞の石井遊佳「百年泥」を読みました。

    石井遊佳さんは、インドのチェンナイに住まれ、IT企業で日本語教師

    をしながらこの小説を書かれたのだそうです。

     

    百年に一度というアダイヤール川氾濫による洪水が発生し、チェンナイ

    のIT企業で日本語教師をする主人公が、川の対岸にある職場へ向かう

    途中の橋の上にたくさん泥が堆積していて、交通が渋滞し、多くの人が

    集まっているのに遭遇します。

    泥の中からいろいろな遺品や、音信不通の人間まで生きた状態で掘り

    出されるというSF的なタッチで書かれています。

     

    インドでは欧米や日本に比べて幼少のころから男女の接近を制限する

    風習があり、30年ほど前まではカースト制度もあって、自由恋愛が

    困難で、境遇の異なる者同士が恋愛関係になると、その一家が親族から

    村八分のような扱いを受け、死人が出ることもあったのだそうです。

     

    そういうこともあって、この小説には百年泥の橋の上に大勢の人が集

    まり、泥の中から過去の人が出てくるという非現実な描写と、自分が

    犯した過去の罪深いことについての懺悔や、過去の事実と違った展開

    にならなかったことを悔やむ様子が書かれています。主人公としては、

    人と口をきけなかった母親と自分との間で話されなかったことば、あっ

    たかも知れないことばについて、思いを馳せます。

     

    また有翼飛行者という特権階級の人がいて、混雑する道路を避けて翼

    を付けて空を飛んで通勤するというSFのようなことがこの小説に2,

    3度出てきます。この有翼飛行通勤が普通に行われているように書く

    ことで、貧富の格差を表現したいというよりも、SF的要素を追加し

    たい意図と、この小説はフィクションですよと明言したい意図のよう

    に思いました。

     

    今後もインドと日本の生活の面白いモチーフに基づく小説を書かれる

    のだろうと思います。私の希望としては、あまり好きでないSF的な

    表現は控えて、もっともっとインドの混沌とした事柄と、一方で優れ

    た頭脳を持つインド人が登場するような愉快な小説を期待いたします。

     

     

     


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